相場の心得

先物相場の波を泳ぐ

相場は売と買の二つしかありませんから、当たる確率は二分の一ということになります。それだからといって、損益の確率も二分の一かというとそうではありません。当たる確率が二分の一だということは、今の時点から次の節とか大引が上か下かということや、保ち合いがあっても結局は上か下かであって、建玉が利益になるかどうかとは別問題ということになります。つまり、当たる確率が二分の一というのは、手仕舞いしない時の確率ともいえます。

相場は建玉も手仕舞いも自分の意志でするものですから、そこには何らかの考え方があって然るべきです。なにも考えないで、漠然と建玉をする人はいないでしょうし、決断したときの理由があったはずです。それが経験であったり、知識や技術によって結果に差がでるとしたら考えておかなければいけない問題です。

船の上から相場の波の様子を見ながら、泳ぎ出そうとしている人たちがいっぱいいるとします。これからの天候や潮の状態を判断して、大きなうねりに乗ろうとしますが、人によってうねりの読み方が違います。結局は一斉に飛び込まずに、自分の身体のコンディションや泳力に合わせて、上手く乗れそうな波が来たときに飛び込むことになります。

しかし、相場は遠泳大会ではありませんから、泳いだ距離や時間が目的ではありません。いつ泳ぎを止めてもかまいませんし、難しいと思ったら岸の近くからやり直すこともできます。沖で漁をする漁師の方が、素人よりはるかに潮の読みが当たることは多いでしょう。湾内の状態も熟知しているに違いありませんが、素人はとにもかくにも溺れずに泳ぎ付くことが大切になります。

たとえ溺れたとしても、最終的に責任をとるのは自分です。となりの人と仲良しになったから一緒にいこうとか、漁師に聞いてから飛びこんだからといって、溺れたときに誰も助けてはくれません。なかには漁師でもないのに、やたらと状況に詳しい素人がいたり、水泳の達人でもないのに、泳ぎ出してから泳ぎ方をうるさく言ったりする人がいるかも知れません。そんなものに惑わされたり、仲間と頑張ろうなどと考えたら、岸まで泳ぎ切ることなど到底できません。

やはり、自分が納得できるまわりの状況と、身体のコンディションが整ってから泳ぎ出さなければならないのです。また、少し泳げるようになったからといって過信してはいけません。途中で泳ぎ方をかえたりすると、横波にのまれたり、急に冷たい潮が胸元にきて慌てたり、時間がかかって身体が冷えて足がつったりして溺れることになります。

泳ぎそのものができなければ、参加することはできないのかというとそんなことはありません。プールの淡水と違って海の塩水では、身体の比重が軽くなりますから浮きやすくなります。見ようみまねで、海岸に近いところを何往復してもかまいませんし、浮き輪を利用することはできませんが、波の少ない時に自信のある距離を確実に泳ぎ切ればいいのです。

そして相場に最も大切なことは、低い波でも波動を感じながら、海岸に寄せる波の力を最大限に利用することなのです。このように、泳ぎそのものはできなくても、波が顔にかかっても平気だとか、顔を水に浸けられるとか以外に、最低必要な技術やちょっとしたコツがあることがわかります。さらに泳ぎそのものをおぼえれば、沖合いの船から飛び込んで、大きな波に乗ることも可能です。

水泳の技術は、基礎理論に裏づけされたものでなければなりませんが、理屈だけで泳げるようにはなりません。相場もファンダメンタルズやテクニカル分析の手法をいくら知っていても、泳げるようにはなりません。水辺で遊んでいるだけでは、水に馴れたとしても泳げるようにならないのと同じです。泳ぎをおぼえるのに水に入ることが絶対条件ですが、おぼえる過程で最も大切なことは、水に馴れれば泳げるようになるのではなく、泳げるようになるから水に馴れるという真理です。

泳ぐ技術を使って泳げるようになるから、波に乗って海岸までたどりつくことができるのです。教えてもらった泳ぎ方が良いのか、自己流の泳ぎが良いのかは泳ぎ切ったときにわかることです。そして泳げるようになってから、過信せずに少しずつ距離を伸ばして行けばいいことになります。沖から泳ぐ自信がなければ、やさしいことを何度も繰り返し練習して、泳ぎ切れそうな状況になるまで待ってもいいわけです。

相場技術は特殊な人たちや、特別な能力がないと習得できないものではありません。身長の差が水泳に影響するとしたら、両手を頭上に伸ばして比べた程度の差でしかありませんし、陸上での腕力や脚力にいたっては、ほとんど泳力に相関しません。誰でも生まれながらにして泳げないのと同じように、相場技術もおぼえなければ上手にはなりません。技術と名のつくもののすべては、知識と心構えと練習によって、誰でも身につけることができるのです。

また、休むことが大切だといって、相場は「年に二、三度のチャンスをねらってやれば必ず勝てる」とか「年中やってはいけない!」などと言われていますが、そんなことはありません。考えに考え抜いてやっても、駄目なときは駄目で、年中やっても儲けることはできます。競泳なら記録を狙うのであれば、調整をする必要はありますが、一度おぼえた水泳の技術は一生忘れませんから、体調さえよければ何時でも泳ぐことができるのです。相場も技術の上手下手で、泳ぐ時期を考える必要はありません。何よりも技術が自分のものになっているかどうかが問題なのです。

[最終更新日] 2016/03/18







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